口唇口蓋裂

1.はじめに

口蓋裂の手引き

近頃では、胎児診断される方も多くなっており、ご両親への早い情報提供が急務となっています。
口唇口蓋裂とは唇顎口蓋裂とも言われ、日本人ではおよそ500人に1人くらいの割合で出現する比較的頻度の高い疾患です。 しかし、近年では治療も確立されつつあり、適切な時期に適切な治療を受ければ、機能的障害なく通常の社会生活を送ることが可能です。 この疾患の大きな問題は顎発育と言語です。当センターでは、独自のシステムにより顎発育と言語ともに良好な結果を得ています。

治療システムも日々進歩しており、例えば、新生児期での哺乳、生後1ヶ月前後の術前顎矯正、口唇形成術と一緒に行う歯肉骨膜形成術、就学前の早期顎裂部骨移植術などが挙げられます。

当センターにおける唇顎口蓋裂の新患者件数

当センターの「口唇口蓋裂治療」のシステムと最新の知見を含んだ概略をご紹介します。

2.口唇口蓋裂の症状と一般的な治療法

口唇口蓋裂の形態異常は大きく分けて下記の3つの症状に分かれます。
   ①口唇裂 ②口蓋裂 ③顎裂
 これらの治療時期は、各施設により異なり、手術回数も様々です。

当院での治療を一般的な治療と比較しながらご紹介します

2-1.口唇裂の治療:口唇形成術

多くの施設では、生後3-4ヶ月頃に行われることが多いようです。ただし、全身の状態が不安定なお子様や、合併疾患を持ったお子様は、それに基づくリスクが軽減されるまで、手術時期を待つことになります。

当科では、口唇口蓋裂専門の矯正歯科医あるいは小児歯科医により、生後から術前顎矯正プレートを用いて手術前に良好な歯ぐきの形態に矯正することができます。これにより口唇形成術と歯槽骨膜形成術及び口蓋形成術の同時手術が可能となります。したがって、当科では口唇形成術の手術時期は術前顎矯正に依存することになります。術前顎矯正は、顎裂が狭くなるまでに多少の時間がかかり、約2週間に1回の通院を要します。

われわれは、手術で良い結果を得るためには、手術時期ではなく、術前に手術がやりやすい環境を整えることが最も重要であると考えています。

  *:歯槽骨膜形成術:術前顎矯正により顎裂を狭くして、初回手術で歯ぐきをくっつける手術。
   乳幼時期は骨形成能力が旺盛で顎裂に骨ができます。これにより、顎裂部骨移植手術を行わなくても
   よくなる可能性があります。

2-2.口蓋裂の治療:口蓋形成術

機能的に最も重要な治療です。言語、顎発育(上顎の成長)、滲出性中耳炎に影響します。口蓋裂手術は各施設で様々です。一般的にPush back法や二段階法(一回目に軟口蓋だけを閉じ、二回目に硬口蓋を閉鎖する方法があります。手術時期としては1歳から1歳半頃が多いようです。

当科では、全ての症例でFurlow法を行っています。この方法は、言語と顎発育に対して良好な結果を得ることができます。

滲出性中耳炎:
 通常は、耳管(鼻腔と中耳を連絡している管)に付着している口蓋帆張筋が収縮し耳管を開口させることによって、鼻腔内からの滲出物を排出しています。口蓋裂の場合、口蓋帆張筋が左右に分断されていて、耳管の開口ができないため、滲出物を排出することができません。その滲出物が貯まった状態が滲出性中耳炎です。放置すれば難聴の原因となりますので、耳の中が見やすくなる生後半年位までには耳鼻科にかかって診察・必要に応じて鼓膜切開や鼓膜にチューブを入れる手術を行います。

2-3.顎裂の治療:顎裂部骨移植術

歯ぐきは将来きれいに永久歯が並ぶための土台として重要な場所です。治療は、この歯ぐきの割れ目(顎裂部)に自分の骨(腸骨の海綿骨)を移植します(顎裂部骨移植術)。治療時期は、十分な骨の量が取れて、裂部の永久歯が萌出する前に行うという考えが一般的です。現在では歯科矯正治療も保険適応され、顎裂部骨移植術と歯科矯正治療の組み合わせは、口唇口蓋裂治療の重要な位置を占めています。いつまでも健康でいるためには、歯は重要な要素のひとつであることは言うまでもありません。

当科では、初回の手術の際に、歯槽骨膜形成術を同時に行うために、顎裂部骨移植術を行うことが少なくなっています。顎裂部骨移植術を行う場合は6才頃に行います。6才以下だと十分に骨が取れないからです。我々の経験では6才時に手術を行っても、上顎成長の抑制は極めて少ないと考えています。

3.術前顎矯正法

術前矯正プレート   使用方法
 
術前矯正前   術前矯正後

唇顎裂

術前矯正前   術前矯正後

唇顎口蓋裂

術前矯正前   術前矯正後

4.手術例

4-1.片側唇顎裂

CASE-1

顎裂部骨移植術の適応となる顎裂が存在しましたが、初回手術時に歯槽骨膜形成術を同時に行うことで顎裂部に骨が形成されました。小学校時に行う顎裂部骨移植術を行う必要がなくなりました。

手術前   手術後
 
 
   

CASE-2

顎裂部骨移植術の適応となる顎裂が存在しましたが、初回手術時に歯槽骨膜形成術を同時に行うことで顎裂部に骨が形成されました。小学校時に行う顎裂部骨移植術を行う必要がなくなりました。

手術前   手術後
 
   

CASE-3

顎裂部骨移植術の適応となる顎裂が存在しましたが、初回手術時に歯槽骨膜形成術を同時に行うことで顎裂部に骨が形成されました。小学校時に行う顎裂部骨移植術を行う必要がなくなりました。

手術前   手術後
 

4-2.口蓋裂

CASE-1

手術前   手術後
 
 

CASE-2

手術前   手術後
 
 
   

CASE-3

手術前   手術後
 
 
   

CASE-4

手術前   手術後
 
 

CASE-5

手術前   手術後
 
 

4-3.片側唇顎口蓋裂

CASE-1

言語良好です。今までに行った手術は1回だけです。これから矯正治療を開始します。

矯正前   矯正後
 
 
 
   
   
   
   
   
   

CASE-2

言語良好です。今までに行った手術は1回だけです。噛み合わせも良好です。

矯正前   矯正後
 
 
 
   
   
   
   
   
   

CASE-3

言語良好です。今までに行った手術は1回だけです。これから矯正治療を開始します。

手術前   手術後
   
   
 
   
   
   
   
   
   

CASE-4

言語良好です。今までに行った手術は1回だけです。これから矯正治療を開始します。

矯正前   矯正後
 
 
 
   
   
   
   
   
   

CASE-5

言語良好です。今までに行った手術は2回です。これから矯正治療を開始します。

矯正前   矯正後
 
 
    手術後
   
   

CASE-6

言語良好です。今までに行った手術は1回だけです。これから矯正治療を開始します。

手術前   手術後
 
 

CASE-7

言語良好です。今までに行った手術は1回だけです。噛み合わせも良好です。

手術前   手術後
 
 
   

4-4.両側唇顎裂

両側唇顎裂は口蓋裂を有さないにもかかわらず治療が難しい裂型です。特に中間顎が突出した症例は、良好な口唇・鼻形態を得ることが困難です。術前顎矯正により突出した中間顎を整位した後に、口唇形成術を行うことが推奨されます。術前顎矯正法は、鼻翼軟骨の整位や鼻柱を伸ばす効果があり、今後の展開が期待されます。

生後3ヶ月以降では治療効果が少ないために、早めの受診をお願いします。

CASE-1

手術前   手術後
 
   
   

CASE-2

矯正治療中です。良い咬合状態です。

手術前   手術後
 
 
   

CASE-3

今までに行った手術は2回です。

手術前   手術後
 
 
 
   
   
   
   

CASE-4

今までに行った手術は1回だけです。

手術前   手術後
 
 
   

4-5.両側唇顎口蓋裂

中間顎(前歯が生えてくる骨)が突出している症例が多く、術前顎矯正治療を行った後に手術を行います。初回手術の術式は、術前顎矯正治療の結果に依存して選択されます。顎裂幅が5mm以下になると歯槽骨膜形成術を行います。さらに、口蓋裂幅10mm以下ですと、Furlow法による口蓋形成術を同時に行うことができます。

① 口唇形成術+GPP   ② Furlow法
 

CASE-1

言語良好です。今までに行った手術は2回です。

手術前   手術後
 
 
   

CASE-2

言語良好です。矯正治療中です。良い咬合状態です。

手術前   手術後
 
 
   
   
   

CASE-3

言語良好です。今までに行った手術は3回です。矯正治療を行います。

手術前   手術後
 
 
   
   
   

CASE-4

言語良好です。今までに行った手術は2回です。これから矯正治療を行います。

手術前   手術後
 
 
   

CASE-5

言語良好です。今までに行った手術は2回です。これから矯正治療を行います。

手術前   手術後
 
 
   
   
   
   
   
   
   
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